最高裁判所第二小法廷 昭和57(さ)2 判決
主 文
原略式命令を破棄する。
被告人を罰金一万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇円を一日に換算し
た期間、被告人を労役場に留置する。
理 由
本件記録によると、岸和田簡易裁判所は、昭和五六年四月九日、被告人に対する
歯科医師法違反幇助被告事件について、「被告人は、東大阪市ab丁目c番d号株
式会社Bの代表取締役として歯科器材、薬品の販売を業とする同会社の業務全般を
統轄しているものであるが、Cが和泉市ef番地のg文化住宅内の自宅等において、
歯科医師の免許を有していないのに、それぞれ歯科診療を行なつていることの情を
知りながら、昭和五四年八月九日
ころから昭和五六年二月三日ころまでの間、九回にわたり前記会社等において、
右Cに対し、歯科診療に必要な器具薬品等合計三〇点(時価合計七六、三〇〇円相
当)を販売して引き渡し、同人をして昭和五五年二月下旬ころから同五六年二月六
日ころまでの間、前記自宅ほか五か所においてDほか二二名に対し一三四回位にわ
たり無資格で歯科医業をすることを容易ならしめ、もつて同人の歯科医師法違反行
為を幇助したものである。」との事実を認定したうえ、歯科医師法一七条、二九条
一項一号、刑法六二条一項、六三条、六八条四号、一八条、刑事訴訟法三四八条を
適用して、「被告人を罰金一八、〇〇〇円に処する。この罰金を完納できない時は
金二、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。ただし、端数を
生じたときはこれを一日とする。この罰金に相当する金額を仮に納付することを命
ずる。」旨の略式命令を発付し、同略式命令は、同月二四日確定したことが明らか
である。
- 1 -
しかしながら、歯科医師法一七条、二九条一項一号によれば、同法一七条違反の
罪にかかる罰金の法定刑の最高額は二万円であり、その幇助犯である本件について
は、刑法六二条一項、六三条、六八条四号の規定によつていわゆる必要的減軽がな
され、その罰金刑の最高額は一万円となるべきところ、これを超過して被告人を罰
金一万八〇〇〇円に処した右略式命令は、法令に違反し、かつ、被告人のため不利
益である。
よつて、刑訴法四五八条一号但書により、原略式命令を破棄し、被告事件につい
てさらに判決することとする。
原略式命令の確定した犯罪事実に法令を適用すると、被告人の所為は、刑法六二
条一項、歯科医師法一七条、二九条一項一号に該当するので、所定刑中罰金刑を選
択し、右は従犯であるから、刑法六三条、六八条四号により法律上の減軽をした金
額の範囲内で被告人を罰金一万円に処し、右罰金を完納することができないときは、
同法一八条により、金二〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する
こととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
検察官豊島英次郎 公判出席
昭和五七年一〇月二九日
最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 木 下 忠 良
裁判官 鹽 野 宜 慶
裁判官 宮 崎 梧 一
裁判官 大 橋 進
裁判官 牧 圭 次
- 2 -